Lectures from Memezawa Medical Clinic

ジェネリック医薬品に対する当院の対応

update 2006.04.23


 2006年の医療保険改訂にともない、以前より話題になっていたジェネリック医薬品の取扱いに対するお問い合わせが増えてきたため、当院の対応についてまとめてみました。

 当院では医薬分業以前は一部薬剤につきジェネリック医薬品を採用していましたが医薬分業化・処方箋発行のみの診療への移行に伴い先発医薬品のみの処方に切り替えていました。これは、以下のような理由によるものです。

1)患者さんの身に異常が発生し、もし救急医療の現場に運び込まれた場合、「普段からどのような薬剤を服用していたか」が大切なポイントとなります。この時、患者さん自身が薬剤そのものを所持していたり、処方内容がわかるような書類(「おくすり手帳」や、処方内容の説明書など)を所持していると大変に役立ちます。しかし、この場合、ジェネリック医薬品だと薬剤の成分名がわからず(たいていのジェネリック医薬品は元となる先発医薬品と異なる名称を製品名にしていた)、せっかくの情報が救急担当者にダイレクトに伝わらず「じゃ、あとで薬剤師さんに確かめてもらいますから」と宙に浮く結果になることが多いのです。これは実際にそうした現場に携わっていないとわからないジェネリック医薬品の大きなデメリットです。

2)ジェネリック医薬品は先発医薬品の特許が切れる時点でその化学成分をコピーして作成されるようです。従って効能・効果は変わらない、というのがジェネリック医薬品メーカーの主張です。しかし、実際には先発医薬品と全く同じ効能(どの疾患に適応があるか)を有していないものも散見します。また、実際の製剤を製造する上において表面のコート剤や剤形などが同一でない場合があり、処方する側としては非常な不安がつきまといます。

3)ジェネリック医薬品はごく最近の発売のものは「成分名(メーカー名)」という名称を採るようになってきました。これは非常に賢明なことですが、以前に発売した「後発メーカーで勝手に付けた名称」から切り替えようとする気配がありません。

 とはいえ、ジェネリック医薬品の採用は患者さんの経済的負担を軽くするメリットもあるため、数年前から当院では解熱鎮痛剤・消炎酵素剤などに限り近所の薬局さんたちと連絡しジェネリック医薬品を採用してきましたが、これが逆に災いし、遠くの薬局さんから「この薬剤は在庫がないため先発品で代用してもよいか?」という本末転倒の問い合わせが時間外にある、という事態も起こっていました。

 2005年春には、処方箋に「銘柄指定の表示がない限り、薬効別薬価基準における同一薬品の範囲内で代替調剤を認めます」という一文を提示し(日経メディカル:2005.11、横浜市立みなと赤十字病院の記事より)、おおむねジェネリック医薬品を受け入れることになりました。あくまで処方箋は先発医薬品で、実際のお薬を何にするかは薬局サイドにおまかせ、という状態です。これで、先に記した解熱鎮痛剤・消炎酵素剤などのジェネリック医薬品に対する問い合わせはなくなりました。

 2006年4月の改訂後、当院でも処方箋システムを書き直し、ジェネリック医薬品を受け入れる処方箋には処方医のサインが入るようにしました。原則的にはカゼひきなど、長期に使用する処方でない場合に限っておりますが、患者さんからの希望がある場合には(当方での処方薬すべてにジェネリック医薬品があるとは限りませんが)高血圧などの生活習慣病や脳梗塞後遺症・パーキンソン病などの患者さんの処方箋にも同様のサインを入れることが出来ます。また、患者さんが希望されても調剤薬局側に先発医薬品とジェネリック医薬品双方を在庫するとは限らないため実際に先発医薬品でなくジェネリック医薬品が入手できるとは限りません。また、当方では今後一切特定のジェネリック医薬品を処方箋には記載しないことにいたしました。

 今回の改訂による当方のメリットは「処方箋の記載をすべて先発薬品に統一できた」ことです。ただし、慢性疾患の患者さんがジェネリック医薬品を希望する場合には、以上のご説明をその都度行う必要が生じてしまったため、今回このようにコメントをさせていただきました。ジェネリック医薬品のメーカーさん側からすればご反論もあるかもしれません。しかし、この方針で当院は対処している旨、明らかにさせていただきます。


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Copywright (C) Hajime Memezawa, 2005