Lectures from Memezawa Medical Clinic

インフルエンザ抗原反応検査キット

update: 2003.12.28

 昨年から一般臨床の場で使われるようになったベッドサイドで検査ができるインフルエンザ抗原の検出キットには何種類かがあります。どれもが短時間で結果がわかるようになっており、インフルエンザのA型・B型の判別が可能なものまであります。当院でも早速使用に供しており、これまで「なんとなく」もしくは「状況的な判断で」つけていたインフルエンザの診断が科学的にできるようになりました。それ以前は、同様の検査のためには検体を検査センターに送り、ファクスの結果が届くのを待たないと診断できなかったのに比べれば大きな進歩です。とはいえ、使い勝手に差があるのも事実で、当院で試した2種類につき、インプレッションをまとめてみました。

 右が、「ラピッドビューインフルエンザA/B(以下ラピッドビュー)」、左が「エスプラインインフルエンザA&B(以下エスプライン)」です。

 ラピッドビューは、A型・B型の判別ができませんが、エスプラインは判別可能です。使用期限も異なり、ラピッドビューは約1年半保存が可能(と言うことは来シーズンまで大丈夫)ですが、エスプラインは約6ヶ月となっています。

 ちなみに、江戸川区医師会ではエスプラインの方を検査センターからの推薦品としています。

 ラピッドビューは、ガラス試験管(底に反応剤がついています)に溶媒(下・黄キャップ)を入れ、粘液をこすり取った綿棒を浸けたのち、試験紙を投入します。

 検体の採取が充分にできていれば反応は速く生じ、本来の待ち時間の1/2程度で判定可能となります。

 エスプラインは、フィルムで蓋(はがしにくい)をされた軟らかいチューブ(液状の反応剤入り)に綿棒を浸し、滴下用のキャップ(フィルター入り)をつけ、試験紙の入った容器の滴下指定部に2-3滴をおとし、さらに根本のブタンを押しつぶすと溶液が試験紙部分に流入するようになっています。

 反応時間は結構長く、説明書によれば15分、となっているものの、実際には15〜20分しないと検定ラインがみえません。どうも採取できた粘液の量に左右されるようで、たっぶり粘液が取れれば短時間で結果が出ました。

 左がラピッドビューの反応後(青ラインは検査が有効である確認ライン、赤ラインがインフルエンザ陽性時に出現する反応ライン)の試験紙。

 右がエスプラインの本体で、中央の青い滴下部の左側に反応ウインドウが見えます。「r」のラインは検査が有効である確認ラインで、陽性だと「B」または「A」の部分に細い青ラインがでます。

 インフルエンザがA型なのかB型なのかは疫学上は非常に重要で、またA型インフルエンザにしか有効でないアマンタジンを使用する場合にはエスプラインを使用する必要があると思われます。しかし、A型・B型のどちらにも有効なタミフル(カプセル剤)・リレンザ(吸入粉末)のどちらかを使用する前提であれば、反応時間が早く、容器を開けやすいラピッドビューに軍配を挙げたいと思います。

 偽陽性率の比較までは(コストと手間の関係で)行っておりません。あしからず。

 今後、さらに改良が加えられた反応キットが登場してくるものと考えられますが、とりあえず2種類のキットを体験したインプレッションです。ご参考になれば幸いです。


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